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東京高等裁判所 昭和53年(行コ)34号 判決

東京都中央区日本橋本町四丁目四番地

控訴人

日本ジエスコール産業株式会社

右代表者代表取締役

酒井正衛

右訴訟代理人弁護士

多久島耕治

進藤寿郎

東京都中央区日本橋堀留町二の五

被控訴人

日本橋税務署長

右指定代理人

宮北登

鳥居康弘

関戸昭治

藤原修志

右当事者間の法人税更正処分等取消請求控訴事件につき、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取り消す。被控訴人が控訴人に対し控訴人の昭和四五年八月一日から同四六年七月三一日までの事業年度の法人税について同五一年四月一七日付でした再更正処分ならびに過少申告加算税及び重加算税各賦課決定処分を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠関係は、次のとおり付加する外は、原判決の事実摘示と同一であるからこれを引用する。

(控訴人の主張)

一、行政事件訴訟法第一四条第四項は、行政庁の処分につき審査請求がなされ、これに対する議決があつた場合には、「裁決があつたことを知つた日又は裁決の日から起算する」旨定めているが、初日不算入の原則は行政事件訴訟法においてもこれを維持すべきであるから、同条第四項の出訴期間の計算においても、あえて初日を算入すべき理由はない。

二、本件訴えの変更は、その書面こそ昭和五一年一一月二五日に提出されたが、控訴代理人は同年五月二〇日及び同年七月一日の各口頭弁論期日において、口頭で訴えを変更する旨述べ、書面による訴えの変更は後日準備書面で提出することを約し、同年一一月二五日に訴変更の書面を提出したものであるから、右口頭による訴え変更の申述により出訴期間を遵守したものとして、本件訴え変更の適法性を認めるべきである。

(被控訴人の主張)

一、行政事件訴訟法第一四条第四項の裁決があつたことを知つた日とは、裁決があつたことを知つた日を初日とし、これを期間に算入して計算すべきものと解するのが相当であつて、このことは最高裁判所の認めているところである。

二、仮に控訴代理人が昭和五一年五月二〇日及び同年七月一日の各口頭弁論期日において、口頭で訴えを変更する旨述べたとしても、訴えの変更は民事訴訟法第二三二条第二項により、書面でなすことを要するから、控訴代理人の右申述によつて出訴期間を遵守したことになるものではない。

理由

一、当裁判所は、本件訴えは不適法として却下すべきものと判断するものであり、その理由は次のとおり付加訂正する外は、原判決の理由と同一であるから、これを引用する。

(一)  原判決二一枚目表五行目と六行目の間に次のとおり付加する。

「控訴人は、本件訴えの変更はその書面こそ昭和五一年一一月二五日に提出されたが、控訴代理人は同年五月二〇日及び同年七月一日の各口頭弁論期日において、口頭で訴えを変更する旨述べ、書面による訴えの変更は後日準備書面で提出することを約し、同年一一月二五日に訴え変更の書面を提出したものであるから、右口頭による訴えの変更の申述により出訴期間は遵守されたものである旨主張する。

しかしながら、行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第二三二条第二項によると、訴えの変更は書面でなすことを要するから、仮に控訴代理人が控訴人主張のように口頭による申述をなしたとしても、そのため出訴期間を遵守したことにはならないので、控訴人の主張は理由がない。」

(二)  原判決二二枚目表三行目から同六行目までを次のとおり訂正する。

「ところで行政事件訴訟法は特に期間計算の通則について定めるところがないから、同法第七条、民事訴訟法第一五六条、民法第一三八条、第一四〇条により、行政事件訴訟法においても別段の定めがある場合を除いて初日はこれを算入しないのが原則であり、同法第一四条第一項、第三項による出訴期間の計算については初日を算入しないことはいうをまたないが、しかし法令の用語例として「‥‥から起算する」という文言を使用している場合は、その初日を期間に算入すべきことを示しているものとされているところ、同法第一四条第四項は審査請求を経由した場合の取消訴訟の出訴期間の計算について「裁決があつたことを知つた日又は裁決の日から起算する。」として、期間の計算につき別段の定めをしているのであるから、同条第四項を適用して取消訴訟の出訴期間を計算する場合には、裁決があつたことを知つた日又は裁決の日を初日とし、これを期間に算入して計算すべきものと解するのが相当である」。

二、よつて本件訴えを不適法として却下した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長 裁判官 園田治 裁判官 田畑常彦 裁判官 丹野益男)

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